最近、口腔内に痛みや違和感などの不定愁訴を訴える患者さんが数多くおられます。その原因にカンジダ症というものがあります。この口腔カンジダ症とは真菌に属するカンジダ菌によって引き起こされる口腔感染症、日和見感染症なのです。

カンジダ菌は口腔内常在菌で通常は病原性を発揮することはないのですが、基礎疾患として悪性腫瘍や糖尿病、血液疾患などがある方、またそのような疾患がなくても抵抗力・免疫力が低下したり、口腔乾燥(ドライマウス)、不適な義歯、抗生剤の連用、喘息治療のためステロイド吸入などが原因で発症します。これは常在菌のバランスが崩れることによりカンジダ菌の増殖が起こり、さまざまな症状を引き起こします。

①偽膜性カンジダ症は口蓋・頬粘膜・舌などに白い苔状のものが付着している昔からいう典型的なカンジダ症。その白色状苔はぬぐうと比較的容易に剥離できます。痛みを伴うこともあります。
②肥厚性カンジダ症は偽膜性カンジダ症から移行したもので粘膜が分厚くなり、角質化した粘膜になったり、時には腫瘤状になります。
③萎縮性カンジダ症は一見、異常所見が見当たらないが舌のヒリヒリ感、灼熱感、口唇の乾燥感などを自覚します。そのほか、舌がまだらになっていたり、舌表面がツルツルに乳頭が消失していたり、口角炎で発赤、びらんを生じます。潰瘍を形成(写真)することもあり、診断が困難な場合があります。

検査は細菌検査を行います。通常、検査の判定は培養された菌のコロニー数で判定しますが、症状と判定結果に疑問を感じることもあり、当院ではクロモアガーという寒天培地を使用し、インキュベーター(写真)で培養しています。この培地は約7から8種類のカンジダ菌を色分けし、培養・増殖させることができます(写真)。もっとも多いカンジダアルビカンス(緑色)、義歯に付きやすいカンジダグラブラータ(ピンク)、カンジダトロピカリス(ブルー)など識別することができます。コロニーの数を自ら確認することができるので、有用性を実感しています。また、細菌培養でまったく陰性でも症状からやはりカンジダを疑う場合は、抗真菌剤(カンジダの薬)を使うことで症状が改善することもあり、その辺がカンジダ治療の難しいところであると考えています。

顕微鏡で鏡検し、カンジダ菌の菌糸を確認することもあり、これが確実な検査法といえます。

写真の患者さんは義歯による潰瘍ではなく、カンジダ菌による潰瘍だったのです。

口腔内の不定愁訴、原因がわからなければ ≪カンジダを疑え≫ です。

次回は治療法についてブログする予定です。

杉本圭介

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杉本歯科クリニック